実践的論文の書き方

はじめに

 本記事は、論文の書き方を記述します。
 論文には様々制約があり、ただ書くには非常に難しい文章作品です。たとえば、ひらがなで書かなければならない単語があったり、1パラグラフ1トピック、ヘッドヘビーなどなど。細かな制約に関しては、ただ文を書くときに気をつければ良いです。しかし、「分かりやすく、正確に、そして完全に」というような、相反する制約まで考えると、とたんに難しくなります。そう言った、「論文を書く際やってはいけないこと」を書いた、いわゆる「論文の書き方」を書いている文書は沢山見かけます。しかし、構成的に、そして具体的に「どう論文を書いていくか」の文書は、あまり見かけない気がします。
 そこで、本書は、論文に課せられている数々の制約に違反せず、さらに悩むことなく構成的に論文を書くための方法を、自己流ながらに、自分のためも兼ねて、書いてみようと思います。きっと、何かしらで困っている方の手助けになるといいなと。なお、本書が部分部分適当なのはご愛敬。気が向いたらちまちま直していこうと思います。
 本書は、まず、論文を書く手順について大まかに述べます。次に、論文の構成はどうやるのか、また文章はどう書くのか、について説明します。そして、論文の各構成要素はどのような意味を持ち、どのような内容をどういう順序で書くのかを説明します。最後に、構成レベルの細かな点についてまとめます。

 お約束ですが、著作権のすべては、当「negationの日記」の管理人である私が保持します。もし何かありましたら、コメントへ。


(;・ω・) ちなみに結構長いですよ。

Mission 1:論文は「計画的」に書こう!

 まず論文は計画的に作っていかねばなりません。そこで、以下の手順がお勧めです。

論文の作成手順

  1. 章建てを作る
  2. 内容を書く
  3. 概要を書く
  4. タイトルを考える
  5. 文章がなめらかに読めるか推敲する
  6. 論文の仕様に沿っているかチェック
  7. 誤字脱字などのチェック

 以後、これを実際にどうやって実現するのかを書きます。

Mission 2:論文の「章建て」をやろう!

Mission 2.1:大まかな章建て?

 章建てとは、論文の大まかな構成を決めることです。「○章 『○○について』」なんて奴ですね。

 この章の分け方なのですが、これには大きな定型があるのです。注意してほしいことは、この定型「参考にする」というものではなく、「必ずそうしなくてはならない(must)」というものなのです。どんなにこういった定型よりも「読みやすい」章建てを考えても、査読者は、定型から外れていると「読みにくい」と思います。なので、ぐっとこらえて、この章建てを守りましょう。その定型とは以下のようなものです。

章の分け方

  1. 概要
  2. はじめに
  3. 使用する技術・定義
  4. 技術・定義の導入
  5. 研究の内容
  6. 実験結果
  7. まとめ

 なお、論文の種類によっては、要らない項目もあるかもしれません。その場合は、自分の書く分野の論文を参照してください。

Mission 2.2:さらに細かく章建て?

 章建ては、章の構成を決めるだけではなく、章の中である「節・小節・小々節」の構造も決めます。「概要・はじめに・まとめ」、これらは分ける必要は無いでしょうけれど。そのほか「使用する技術・定義、技術・定義の導入、研究の内容」はさらに細かく分けなければなりません。なお、実験結果の章は必要ならば分けますが、分ける必要がない場合が多いでしょう。もし種類の違う実験を行った場合、実験ごとに節で分けると良いと思います。

 ※ なお、他の細分化基準として、他の章と比べて「長いかどうか」があります。もし長い場合、分割ができないか考えてください。章が長いだけで「読みにくい」と思われてしまう場合があるからです。

Mission 3:論文の「文章」を書こう!

Mission 3.1:章内部の構成を作ろう!

 章建てが決まると、いよいよ論文の章(ここでは章・節・小節・小々節全てまとめて「章」と呼びます)内部の文章を書くことになります。この内容を書くときに気をつけなければならないことが、「ヘッドヘビー」と「1パラグラフ1トピック」です。ヘッドヘビーとは、「段落の第一文が結論にならなければならない」という制約です。そして、1パラグラフ1トピックとは「段落は一つの主題しか持たない」という制約です。そこで、以下の手順で書くことにより、それを自然に守ることができます。

章内部を書く工程

  1. 章内部の文章を箇条書きで書く
  2. 段落を書いていく

 大事なことは「一度、箇条書きで書く」ということです。「それなら論文全体箇条書きでいいじゃん」と思うかもしれません。いや、僕も思います。しかし、多くの研究者(天才は除く)は「体裁」を非常に重んじます。つまり、論文として、文章として、はたまた「本として」の体裁が整っていないと「だめだ」と言うのです。その上で、「ヘッドヘビーでないとだめだ」というのです。そこで、一度やむなく箇条書きをします。

 さて、その箇条書き、どのような内容の順序でやっていけばよいのか、と考えると思います。そこで、大まかに以下のような理論の展開で書けばよいと思います。

  1. (基礎)ここはどこか(この章・節は何を話すのか)
  2. (原因)何を
  3. (行為)どうするか
  4. (結果)どうなるか
  5. (事例)たとえばどうやるか

 研究者というのは、総じて「文章を読んで推測する」ということをしません。なので、「今から何を話しますよー」と説明しなければならないのです。その上で、「あーして、こうしたら、こーなったよ」と説明するわけです。

 では、その箇条書きの実例を挙げてみます。たとえば、「インターネットの使い方」という論文で、「検索エンジンの利用」という章を書くとします。そのとき、例の話の流れに従って、以下のようにできるでしょう。なお、先の箇条書きの項目は、あくまで「流れ」であるので、必ず5項目で書く必要はありません。どうぞ思いのままに書いてください。

箇条書きの例

  1. インターネットを使うと簡単に大量で最新の情報が手に入る
  2. しかし、インターネットサイトは膨大で、URLを打って目的のサイトにたどり着くのは難しい
  3. なぜなら、それではURLを正確に知っていないとページにたどり着けないからだ
  4. さらに、URLだけでは目的のサイトか分からない
  5. 検索エンジンを使えば、多くのページに対して全文検索ができる
  6. これにより、探すことに時間を費やす必要が大きく省ける
  7. したがって、今の時代、インターネットを使うには検索エンジンは不可欠だ
  8. たとえば、Googleで「はてな」と検索すれば一発で探し当てられる

 さて、次にこの箇条書きをどうやって「文章にするのか」という話になります。ちょっと待ってください。文章にする前に、もう一つ手順があります。それは、、「したがって」や「なぜなら」といったように、論理的展開を含む接続詞で「前の項」とつながるものをマスクすると言うことです。これは、「その項目がどの項目に係っているか」という判断でも良いかもしれません。それを行うことで、先の箇条書きは以下のようにできます。

箇条書きのマスク

  1. インターネットを使うと簡単に大量で最新の情報が手に入る
  2. (しかし、インターネットサイトは膨大で、URLを打って目的のサイトにたどり着くのは難しい)
  3. (なぜなら、それではURLを正確に知っていないとページにたどり着けないからだ)
  4. (さらに、URLだけでは目的のサイトか分からない)
  5. 検索エンジンを使えば、多くのページに対して全文検索ができる
  6. (これにより、探すことに時間を費やす必要が大きく省ける)
  7. (したがって、今の時代、インターネットを使うには検索エンジンは不可欠だ)
  8. たとえば、Googleで「はてな」と検索すれば一発で探し当てられる

 このようにマスクが完了します。このマスクされない箇条書きの項目 1、5、8が、章内部の文章での
 段落の第一文
になります。こうやって書くと、自然と「ヘッドヘビー」と「1パラグラフ1トピック」が守られます。なお、マスクされた部分は、前の段落の内容に含まれることになります。

Mission 3.2:段落の文章を書こう!

 章内部の構成と、段落の第一文が決まりました。そこで、今度はその段落をどう書いていくのかということになります。そのためにまず、「段落」の内容はどのような順序で書かれるかを、以下に示します。

段落の内容順序

  1. 箇条書きで決められた第一文(その段落の結論)
  2. 第一文や、以後の説明で必要な語彙の説明
  3. 上記で説明した語彙から、第一文の結論へつながる論理展開(論理展開は因果の関係で書く)
  4. 必要なら次の段落へのつなぎ言葉

 先ほどの例で、実際にやってみましょう。例の箇条書きは以下のようなものでした。

箇条書きの例

  1. インターネットを使うと簡単に大量で最新の情報が手に入る
  2. (しかし、インターネットサイトは膨大で、URLを打って目的のサイトにたどり着くのは難しい)
  3. (なぜなら、それではURLを正確に知っていないとページにたどり着けないからだ)
  4. (さらに、URLだけでは目的のサイトか分からない)
  5. 検索エンジンを使えば、多くのページに対して全文検索ができる
  6. (これにより、探すことに時間を費やす必要が大きく省ける)
  7. (したがって、今の時代、インターネットを使うには検索エンジンは不可欠だ)
  8. たとえば、Googleで「はてな」と検索すれば一発で探し当てられる

 これにより、第一段落の第一文は「インターネットを使うと簡単に大量で最新の情報が手に入る」となります。ではこの段落を書いてみましょう。

 まず、段落内部の内容順序にあった「語彙の説明部分」を考えます。この段落には、3項目マスクされたものが含まれます。その部分を含め、「インターネット」、「URL」、「サイト」などが語彙として出現します。そこで、語彙の説明部分では、これらの簡単な説明を書くことになります。もちろん、すでにそれらの用語が説明されていれば、再度説明する必要はありません。

 つぎに、「第一文につながる論理展開部分」を考えます。この場合は、「インターネットはネットワークにつながったPCがあれば、世界中の情報が手に入る」と言うような感じにしましょう。

 そのほか、マスクされてこの段落に含められる項目部分は、次の段落へのつなぎですね。なのでそのように書くことにします。

 以上を踏まえて、実際に書くと、こんな感じになるのではないでしょうか。

<第一文>インターネットを使うと簡単に大量で最新の情報を手に入れることができる。<用語説明>インターネットとは、コンピュータ同士が世界中に広がるネットワークで接続され、その情報を共有できる仕組みである。そのネットワーク上には、サイト(ホームページ)と呼ばれる、ユーザが任意に作成した情報が、無数に公開されている。ネットワーク上で、それらサイトの住所に当たるものがURLで、おのおののサイトに対して固有の文字列が割り当てられる。<論理展開> つまり、インターネットに接続されたコンピュータ端末があれば、URLを指定するだけで自由にそして迅速に世界中の情報を閲覧することが可能である。<次段落へのつなぎ> しかし、ネットワークは世界中に広がっているため、そのネットワーク上に公開されているサイトは無数に存在する。またそれらを識別するURLは内容を表すものではないため、自分が求める情報をURLを指定する方法で発見するのは、非常に困難である。
(……「検索エンジンを使えば、多くのページに対して全文検索ができる」の段落へ続く)

 この方法を繰り返して、章内部の文章を書いていきます。

Mission 4:論文の章それぞれの内容とは?

 章建てには、ある決まった章の順序がありました。それは以下でした。

章の分け方

  • 概要
  • はじめに
  • 使用する技術・定義
  • 技術・定義の導入
  • 研究の内容
  • 実験結果
  • まとめ

 本章では、これらの内容はどのようなものなのかを、より細かく見ていきます。

章:「概要」

 これは論文の概要です。この概要の書き方は以下になります。

概要の書き方

  1. まず論文全体を箇条書きで表す。
    1. 論文の目的
    2. 内容
  2. その箇条書きの項目をただ繋げる。
  3. 日本語(英語)としてなりたつように、接続詞や言い回しを調節する。

 余計な言葉は必要ありません。純粋にこのように素っ気のない、しかし、何を書いているかが少量で分かる文章をただ、淡々と書きましょう。そうすると概要の完成です。なお、場合によっては、文字数などの下限が決められていたりします。下限に達しない場合は、少々脚色をつけるなりして、文字数を稼ぐ必要があります。

 以下にその概要を書く方法の例を示します。まず、この文書の概要は以下のようにまず箇条書きでかけます。

概要(第1段階:箇条書き)

  1. 論文を構成的に作り上げる方法を提案する(目的)
  2. 論文を書く手順を説明する
  3. 章建てのやり方を説明する
  4. 章の文章の書き方を説明する
  5. 各章の意味的内容を説明する
  6. 他論文を書くときに気をつけるルールを説明する

 これを、つなげると以下のようになります。

概要(第2段階:連結)
論文を構成的に作り上げる方法を提案する。論文を書く手順を説明する。章建てのやり方を説明する。章の文章の書き方を説明する。各章の意味的内容を説明する。他論文を書くときに気をつけるルールを説明する。

 次に日本語として成り立つよう、調整します。このとき語彙にできるだけ多様さを持たせた方が良いかもしれません。

概要(第3段階:調整)
本書では、論文を構成的に作り上げる方法を提案する。まず、大まかに論文を書く工程を示す。次に、章建ての方法を示す。そして、章の文章の書き方を説明する。その後、各章の意味的内容、論文を書くときに気をつける些細な点について列挙する。

 もし、短すぎる場合は、各要素に対して一言入れましょう。内容はその「結果」どうなるか、がよいと思います。

概要(第4段階:増量)
本書では、論文を構成的に作り上げる方法を提案する。この構成的な方法論により、悩む必要が軽減される。まず、大まかな論文を書く工程を示す。次に章建ての方法を示す。章はどのように分けられ、そして構成されるのかを提案する。そして、章の文章の書き方を説明する。文章を書くことはもっとも難しいが、ここにおいて提案する構成的な方法により、どのように文章を書いていけばよいのか考える必要がなくなる。また各章の意味的内容について言及する。ここでどのような章があり、それぞれどのような内容なのかが説明される。最後に、論文を書くときに気をつける些細な点について列挙する。論文には記述様式がある。どのような様式があるのか提示し、校正の際の手助けとする。

 こんな感じでどうでしょうか。

 なお、概要はこのように論文全体に関わることなので、論文の最後に書くことをおすすめします。

章:「はじめに」

 いわゆるイントロダクションという章です。よく「研究の背景を書きます」などとお茶を濁している説明が多いですが、具体的にいうと、ここは、研究の意義(研究する意味があるということ)を読者に「分からせる」章です。そのほかには、これからどういった話しをするのか、この論文の内容はどういった順序で勧められるのか、そういう紹介も兼ねます。それらの役割を持つ「はじめに」は以下の手順を踏む方法が一般的です。

「はじめに」の内容順序

  1. 研究内容のダイジェスト(概要)
  2. 研究分野の説明(分野)
  3. 研究分野にある問題(研究対象)の説明(対象)
  4. 問題を解く必要性や解いた場合の効果の説明(効果)
  5. その問題をどうやって解くのかという指針や方針(戦略)
  6. 具体的にはどういった技術を使うのかという軽い説明(戦術)
  7. 論文の構成(構成)

 これらについて、「章内部の書き方」に従って書きます。つまり、箇条書きをし、マスクをし、それぞれを第一文にします。その上で、段落内部の書き方に従うことになります。

 たとえば、「論文の書き方」という論文の「はじめに」は以下のような感じになると思います。

<概要> 本書では、論文を構成的に作り上げる方法を提案する。まず、章建ての方法を示す。次に、章の文章の書き方を説明する。最後に、論文を書くときに気をつける些細な点について列挙する。
<分野> 論文は技術書であり、その書き方は広く「テクニカルライティング」という名前で知られている。これは、読みやすい技術文章とはどうあるべきか、それについて述べられたものである。
<対象> 読みやすさを備えた技術文章を書くことは、非常に難しい。まず、この「読みやすさ」は、一般的な文章の読みやすさとは意味が異なる。一般的な読みやすさとは「どれだけなめらかに読めるか」であるが、技術文書の場合「どれだけ情報を、楽に、正確に、完全に得られるか」といった意味になる。この「読みやすさ」にみられるように、技術文書に求められることは、それぞれが相反するものも少なくない。これが技術文章を書くことに頭を悩ませる原因である。
<戦略> そこで本書は、「どのように書けばよいのか」と悩む必要が無くなるように、構成的な論文記述の方法論を提案する。
<戦術>まず、論文の構成とはどのようになっているかを分析し、大まかな作成の手順を見つける。次に論文を構成している要素を分析し、章建て、章内部の段落、段落内部の文章、それぞれについての作成方法を提案する。最後に校正時に喜おつけるべき事柄などを列挙する。
<構成>本論文は以下の構成を持つ。まず2章では○○について述べる。3章ではXXを使用したYYについて述べる。4章では本研究を用いて実際に実験した結果について述べる。最後に5章でまとめについて述べる。

 この例は、段落内部を厳密に書いていません。きちんと書くと、もっと長くなると思います。

章:「関連研究・基礎技術」

 この章では、自分の研究にかかわる他の研究や技術について述べます。つまり、ここは自分の研究を説明するために必要な基礎知識(ツール)を紹介する章といえるでしょう。また、もしも似たような研究が存在する場合、自分の研究が何故その研究よりも優れているかを説明する章でもあります。したがって、ここで書かれる内容は以下の2つになると思います。

  • 先行研究の紹介とその欠点
  • 用いている他の研究の定義
関連研究の紹介とその欠点の紹介

 ここでは、自分の研究と似た研究、または競合する研究などについて紹介し、その欠点や性能などを挙げることで、自分の研究の存在意義を示します。他人の研究の欠点を挙げることは多少はばかれることもあると思いますが、競合する研究に全く欠点が無く、同じ研究内容なのであるならば、自分の研究を公開する意味はありません。少なくとも、その競合する研究に対して、自分の研究のどこが優れているのかを明らかにしましょう。

 ただし、具体的な内容に踏み込んで細かく比較する必要はありません。「XXにはYYという欠点がある。われわれはこの点をZZの見地から改善した」のような軽い比較で良いと思います。細かい比較結果などは、後の「実験結果」などの章で説明すればいいと思います。もし、このときその詳細に触れないことが心配であるならば、「詳細はN章で述べる」など書くと良いでしょう。

 また、この関連研究の章で、他の研究の欠点を挙げる必要がない場合もあります。それは、自分の研究が他人の研究を組み合わせたものである場合です。その場合は、「XXの研究は……。そしてYYの研究は……。……。われわれはそれらを組み合わせて……した。」のような書き方をすることになるでしょう。

関連研究の定義

 用いている定義に関しては、淡々と書き連ねればよいと思います。

なお、定義ごとにセクションを分けて、

  1. 定義の出典と特徴
  2. 定義
  3. 定義の意味
  4. 必要ならば定義を使用した例

と書くと分かりやすくて良いかもしれません。

 たとえば、はてな記法を例にとると、以下のようになるでしょう。

X章 Y節
定義リスト記法

 はてな記法には定義リスト記法と呼ばれる定義を書くための独自の記述方法が定められている(http://hatenadiary.g.hatena.ne.jp/keyword/定義リストをつくる(定義リスト記法))。これを用いることで、HTMLを複雑に組み合わせる必要なく定義を完結に書き表すことができる。その定義は以下のようになる。

【定義】定義リスト記法
はてな記法において、`:[定義名]:[定義内容]' という記述は定義の記述に用いる。この記法のことを「定義リスト記法」と呼ぶ。

 これは定義名部分が項目名になり、定義内容部分が自動でインデントされる効果を持つ。その定義リスト記法を利用した例は以下になる。

ソースコード

:和:足し算のこと。

表示

足し算のこと。
章:「他の研究の組み込み」

 定義の章や、関連研究で紹介した他の研究を、どういった理由で自分の研究で使用する(しなければならない)のかを書きます。たとえるならば、「定義の紹介」部分は、「道具をそろえる」章で、「自分の研究」の章は、「道具の使い方」の章です。したがって、「なぜその道具を選んだのか」という説明がいるわけです。

例として、はてな記法LaTeXの記法を組み込むとします。その場合は以下のような感じになるかと思います。

自分の研究への組み込みの例
 本研究でははてな記法(定義n)に対しLaTeX記法(定義m)を組み込む。はてな記法は平文や、簡単なソースコード、そしてHTMLの略記などの機能がある。しかし、はてな記法上で数式を表示するためには、別途数式の画像や、人が打つには手間のかかるMathML(http://washitake.com/MathML/)などを使用する必要がある。人手による百科辞典を目指すWikipedia(http://ja.wikipedia.org/)では、数学に関する項目も多くあるため、その記法にLaTeX記法が導入されている。これからも明らかなように、LaTeXは広く普及しており、数式の記述に優れた記法である。そこで本稿では、はてな記法LaTeX記法を組み込む。これにより、はてな記法を複雑化することなく、広く知られた記法で数式の記述が可能となる。

 このように「他の研究の導入意義」を、使用する「技術」、「定義」ごとに書いていきます。

章:「自分の研究の紹介」

 いよいよ論文のメインでもあるここでは、自分の研究を細かく相手に分かってもらえるように書く章です。できるだけ細かく、誤解の無いように、そして理解を助けるために図や例などをふんだんに盛り込んで書きましょう。

 ここでの構成は主に以下のようにすると良いと思います。

  1. 前章で紹介した他の研究の定義を何故組み込むのかという説明
  2. 自分の研究の処理手順や仕様などの詳細

 なお、他の研究の組み込み意義や方法説明の節が長くなりそうでしたら、別の章にしてもよいと思います。

章:「自分の研究の紹介」

 この章は、論文の本体ともいえる「自分の研究」に関して説明するところです。

 この部分が他の部分と異なることは、「順序よく説明していく必要がある」ということです。つまり、この章の文章は、ほとんどの部分で場所の交換がききません。むしろそれが可能であってはなりません。自分の研究が一体どういった順序で何をしているのかを細かく、関連づけて書く必要があります。

大構造

  1. 全体の流れの概要
  2. 研究への入力
  3. 研究の中身
  4. 研究からの出力

 まず、全体の概要を述べることで、読者に基礎知識を与えます。これによって、読者はどういった気持ちと、心構えで読んでいけばいいのかがわかり、読みやすくなります。基本的に、他人の研究の詳細などは読みにくいものです。元々読みにくいのならば少しでも読みやすくする工夫が必要になります。この流れの概要は箇条書きで書きましょう。

 次に研究への入力を説明します。入力とは、概念であったり、研究の対象であったり、具体的なデータであったりします。つまり、研究が用いるすべての情報は、その研究に対する入力であるわけです。その上で、研究において重要なことは、「何が入力」で「何が出力」かを、わかりやすく読者に伝えることが重要なのです。そこで、ここで入力を説明するわけです。

 次に、研究の中身を説明します。研究の中身とは、「入力」に対して自分が何をしたか、を具体的に説明する部分です。情報系であるならば具体的なアルゴリズムになるでしょうし、民俗学であれば自分が行った考察などになるでしょう。つまり、ここが論文の肝になります。

 最後に研究からの出力を説明します。ここは場合によっては必要がなかったり、前項の「研究の中身」に書かれる場合もあると思います。この出力で重要なことは、「投げっぱなしにしない」ということです。研究の中身によって出力されたものが、いったいどういう意義、意味を持っているのか、それを解説する必要があると言うことです。




 大まかな構造は前節の順序に従って自分の研究を述べていくと良いでしょう。ただし、本当にその構造だけで、章を区切って書くには大きすぎる区切りです。自分の研究を述べるとき、実際にはさらに細かく節を分割して述べて行く必要があります。そのときに部分的な大構造をどうやって区切っていくかと言うことが問題になります。

 その大構造の要素は以下のようなものでした。

  1. 全体の流れの概要
  2. 研究への入力
  3. 研究の中身
  4. 研究からの出力

 まず「全体の流れの概要」これは分割する必要がないでしょう。もしも分割するほど長ければ、概要になっていない恐れがあります。

 次に研究への入力です。これは、入力されるものの種類ごとに分割すればよいと思います。

 研究の中身については技術の要素ごとに区切ると良いでしょう。

 最後の出力は、中身に吸収されることもあります。もし別途記述する場合は、そのデータごと(出力の種類ごと)に分けると良いと思います。

 次にその分割された細かな節の内部構造を述べます。

 節の構造は、それぞれ述べられる内容が異なります。しかし、ほとんどの場合、一定の構造を共通して持っていることがわかります。それは以下のような構造です。

小構造

  1. その節の主題の概要と、意義
  2. 具体的主題で使用するアルゴリズムや、定義、証明など(形式化した数式などを用いる)
  3. 内容、定義、アルゴリズムなどを言葉での解説
  4. (必要なら)例

 まず、節での主題について述べます。つまりこれは「この節では何を説明するか」という宣言です。

 次に、主題に対する説明を述べます。このとき、内容は形式化したもので「正確」に述べられます。つまり、式、数式、アルゴリズムの場合は抽象化したソースコード、などを用いることになります。この部分については「読みやすさ」よりも「正確さ」を重視してください。

 次に、上記で述べた分かりにくかった「主題の正確な内容」を言葉で「わかりやすく」説明をします。論文である以上、正確な内容の記載が必ず必要です。前段落はそのための内容です。しかし、論文は読みやすく、理解されなければなりません。そこで、ここでその「理解」と「読みやすさ」を補充するわけです。

 最後にもっとわかりやすくするために、具体的な例を記述します。例は必要がない場合もあるので、書かれるかどうかは、場合によるでしょう。例を書くときは、(1)具体的な例(2)その例の説明、というような順序で書いてください。これは定義のところで書いた内容とほぼ同じです。

章:「実験結果」

実験結果は

  1. 実験環境(使用した機材)
  2. 実験に使用したデータ(実験対象)
  3. 実験の結果
  4. 結果に対する考察

を「淡々と」書いてください。余計な内容は一切必要ありません。むしろそれ以外について書く必要がある場合は、この章までにそれを「書き漏らしていた」と考えてください。

章:「まとめ」

 まとめは論文が寄与する部分を改めて書く章です。書き方としては、

  1. 箇条書きで寄与したことを書き並べる
  2. 箇条書きの項目それぞれについて、詳しく、わかりやすく説明をする。
  3. 今後の課題を書く

 まず箇条書きでまとめましょう。これは概要のようなものです。

 次に、箇条書きの各項目についてわかりやすく説明をしていきます。何をしたのか、それがどういう利点や意味を持っているか、などを書いてください。

 最後に今後の課題を述べてください。もしも「完璧だ!課題などない」と思われた場合は、そんなことは「ありえません」ので、自分の研究に対する理解が自分自身無いと思ってください。ただ、数学などの理論系においては、研究対象とする問題が明確であり、かつ研究内容も形式的で、論理的であるので、研究対象に対する今後の課題は無い場合もあると思います。その場合は、将来の展望や発展、また応用などを書くと良いと思います。

Mission 4:校正時に気をつけること

 論文はまず、校正レベルみたいな細かいことを気にせずに、「だーっ」と書いてしまうことをお勧めします。細かいことは後で見直せばよいのです。その細かいことを、以下に列挙します。

校正時に気をつけること

  • 一文あたり50〜60文字を超えない(短いほどよい)
    • 「〜だが、〜」は「〜である。しかし〜」とするとよい。
    • 「であり〜」は「〜である。そして、〜」とかにするとよい。
  • できるだけ能動態で書く
    • 特に「〜ている」などの進行形は使わない。
  • 否定文はできるだけ使わない
    • 肯定的に書く
  • 未定義の用語は使わない。使う場合は一般的な用語に置き換える
  • 用語の英語名およびその略称は、初出に付ける。
    • 「語彙(lexicon)」とか
  • Citeは初出に一度だけ引く。
  • パラグラフ始めや、章の始めの「〜〜を述べる」「〜〜を説明する」は意味がないので極力使わない(自分ルール)
  • 論文内で使用していないことは書かない
    • 書きたい場合は \footnote{〜〜} で
  • 自明なことは書かない
    • 線引きが難しいですが気をつけましょう
  • 同じことを書かない
    • 定義などが、離れた場所で使用されるとき、思い出してもらうために軽く触れるのはOKだと思います
  • 英数字、漢数字は統一する
    • 「一つ目は、〜二つ目は〜」の場合は「ひとつめは〜、ふたつめは〜」のように平仮名書きしましょう。
    • 用語の中に数字が入っているとき(「一階述語論理」など)は漢数字で良いと思います。
    • そのほかは、基本半角英数字で。
  • できるだけ簡素で簡潔な文章にする
    • 「〜することである」は「〜する」などにできないか確認する
  • 主語の型を気にする
    • ちょっと長くなると「〜の制約とは、〜〜……する。」なんてしてしまうことがあります。主語が「制約とは」と名詞なら、最後はきちんと「〜する『こと』」とする。
  • 平仮名書きの用語に気をつける
    • ×「出来る」
    • ×「従って」
    • ×「成り立つ」
    • ほかいろいろ。曖昧なものに関しては、全体で統一していればいいと思います。